2015/1/28 ホウ素中性子捕捉療法による難治性の頭頚部がん治療について 他
ホウ素中性子捕捉療法で大きな成果をあげておられる大阪大学の加藤逸郎先生と加藤先生はじめ多くのがん専門医が渇望している中性子装置の開発計画を進められている堀池 寛先生をお迎えして、中性子によるがん治療の優秀性と液体金属リチウム方式の中性子源装置の開発についてお話しいただきました。
現場の医師から、がん治療の最先端をお聞きできた貴重な機会でした。
講演内容
1. 「ホウ素中性子捕捉療法による難治性の頭頚部がん治療について」
加藤逸郎( 大阪大学 歯学研究科 口腔外科学第二講座)
加藤逸郎先生は大阪大学の口腔外科で腫蕩治療を専門とされている新進の歯科 医師で、頭頚部がんに対してホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を世界で最初に実施 された権威です。
京都大学原子炉やJRR- 4原子炉を使って多くの患者さんに 希望を与えて来られた先生です。
ホウ素をがん患者にあらかじめ投与し、腫瘍 にホウ素が集積したところに熱中性子を照射することで、患者の被ばくが少なく、且つがん細胞だけが選択的に死滅されるという、ホウ素中性子捕捉療法の 現実の患者さんへの適用で、多くの優れた治療成果を上げておられます。
加藤先生の外来には日本全国から患者さんが来られており、その実例を講演して頂 き、中性子を利用したがん治療の優秀性をお話し頂きました。
非常に効果的な症例 を拝見し、中性子によるがん治療の優秀性が理解できました。
2. 「液体金属リチウムをターゲットとするほう素中性子捕捉療法装置の開発」
堀池 寛(大阪大学工学研究科教授)
研究用原子炉ではがん治療に回せる余裕が少なく、また原子炉は医療施設として認定されないため医師には使い難く、病院に隣接して 設置可能な中性子装置が、加藤先生他の多くのがん専門医の方々より渇望されて おります。
このため大阪大学の工学部、歯学部、医学部では三菱重工、住友商事の支援を得て、加藤先生や旧第一講座の液体金属技術、OKTAVIAN中性子源の経験を 生かした、液体金属リチウムをターゲットとする中性子捕捉療法装置の開発を進めて おられます。液体リチウム方式は、中性子に付随して生成されるガンマ線が少ないため、治療を受けられる患者さんの被ばく線量が圧倒的に少ないのが特徴です。
中性子源用の液体金属リチウムターゲットの開発の経緯と今後の計画について講演いただきました。